
問われているのは、ビジネスモデル
自動運転が普及すると、日本の自動車産業はどうなるのか。私が重要だと考えているのは、新車の販売台数が増えるか減るかではなく、自動車メーカーがこれまでと同じビジネスモデルで成長できるかという点です。品質や生産技術という日本の強みは本物ですが、それがそのまま将来の強みになるとは限りません。何を自社で開発し、何を外部と組んで実現するか。その経営判断が、これからますます重要になると考えています。
車は1日の4〜5%しか走っていない
イギリスの交通研究機関 RAC Foundation の調査では、自家用車が走っている時間は約4〜5%で、残りの約95%は駐車しているとされています。日本でも同じ数字とは限りませんが、通勤の往復以外はほとんど駐車場にある、という実感とは合っています。
必要な時に無人の車を呼べるようになれば、1台の車を多くの人で使うようになり、社会全体で必要な車の台数は減る可能性があります。一方で、稼働時間が長くなれば消耗も早くなります。ただし電動化で部品が減れば、その買い替え需要も減るかもしれません。新車販売が増えるとは考えにくいものの、激減するとまでは言い切れません。
電動化と自動運転で変わる競争環境
電動化と自動運転は別々の技術に見えますが、どちらも自動車産業の競争環境を大きく変える可能性があります。
| | これまでの自動車メーカーの得意分野 | これから需要が高まる技術 |
|—|—|—|
| 電動化 | エンジン、機械技術、生産技術 | モーター、バッテリー、電力制御 |
| 自動運転 | 人が関わる「すり合わせ」 | AI、ソフトウェア |
特にトヨタは、エンジン技術、品質管理、生産技術などで非常に高い競争力を持ち、人が関わるすり合わせの領域では他国に負けない技術があります。それでも、求められる技術が変われば、強みの意味も変わっていきます。
半導体産業の分業から学べること
半導体産業では、設計に強いアメリカの企業と、製造に強い台湾の TSMC のような企業が、それぞれの得意分野を生かして分業するビジネスモデルを展開してきました。
自動車産業でも、日本メーカーが得意とする高品質な車づくりと、ソフトウェア企業が得意とする AI や自動運転技術を組み合わせる分業を、もっと考える必要があると考えています。安全性と車両全体の品質には、自動車メーカーが責任を持たなければなりません。しかし、すべてを自社だけで開発する必要はありません。トヨタ自動車も最近では、中国のソフトウェアメーカーなど、さまざまな企業と協業するようになってきています。
イノベーションのジレンマと「ものからことへ」
クレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』は、優れた企業ほど、これまでの成功によって新しい技術や市場の変化への対応が難しくなることがあると指摘しています。成功してきたやり方が、将来の成長を妨げてしまう可能性があるということです。
これからは、優れたものを作るだけでなく、そのものによってどんな価値や体験を提供できるかが重要になります。自動車でいえば、車を所有することから、自由に移動できることへ。自動車メーカーも、車を売るだけでなく、移動そのものに価値を提供する企業へと変わろうとしています。この変化は日本の製造業全体に通じるものであり、大学も無関係ではありません。過去の成功は、未来の成功を保証しません。経営者だけでなく、研究者、エンジニア、営業の方も含めて考えていくべき課題です。
La quaLabについて
La quaLabでは、半導体技術や品質管理を中心に、企業向けの技術コンサルティングや研修を行っています。新しい技術を知るだけでなく、それをビジネスや現場の課題解決にどう活かしていくか、そのお手伝いをしています。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
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