研究開発費17年連続増でも「お金」だけでは進まない――研究人材不足・産学連携・研究セキュリティー


記事概要

日本企業の研究開発費は17年連続で増加し、2026年度計画ではトヨタ自動車が1兆6000億円でトップです。一方で、研究開発人材の採用が難しくなったと答えた企業は67%にのぼります。本記事では、研究開発費の規模と売上高比率から見える業界ごとの特徴、自動車・製薬業界の主な研究分野、研究人材不足の現状を整理したうえで、企業と大学の共同研究の現場で課題となる NDA(秘密保持契約)、特許出願、学会発表のタイミング、そして研究セキュリティーについて解説します。

メタディスクリプション(検索結果向け)

研究開発費は17年連続増、トヨタは1兆6000億円。それでも研究人材の採用は67%の企業で困難に。産学連携、NDA・特許・学会発表、研究セキュリティーの課題を大学教員の視点で解説します。

リード

日本企業の研究開発費が17年連続で増加しています。EVや自動運転、脱炭素、新薬の開発など、企業は5年後、10年後を見据えた研究開発に大きな投資を続けています。しかし、研究開発は予算を増やすだけでは進みません。研究を担う人材の確保、企業と大学をつなぐ仕組み、そして研究成果を守りながら社会に出していくルールが欠かせません。本記事では、企業との共同研究に携わる大学教員であり、La quaLabの経営者でもある立場から、これらの課題を整理します。

研究開発費は17年連続で増加――トップはトヨタの1兆6000億円

日刊工業新聞の記事によると、日本企業の研究開発費は17年連続で増加しています。2026年度の計画で研究開発費が最も多いのはトヨタ自動車で、その額は1兆6000億円です。第2位はホンダの1兆1900億円、第3位はデンソーの7050億円です。

売上高研究開発費比率で見る業界の違い

研究開発費は、金額だけでなく売上高に対する比率で見ると、企業や業界の特徴がよくわかります。

| 企業 | 研究開発費の売上高比率 |
|—|—|
| トヨタ自動車 | 約3% |
| デンソー | 9.1% |
| アステラス製薬 | 16% |
| 第一三共 | 21.4% |

トヨタの比率は約3%ですが、デンソーは9.1%と高く、製薬会社ではさらに高くなります。第一三共の21.4%は、売上高のおよそ2割を研究開発に充てていることを意味します。研究開発への投資の考え方は、業界によって大きく異なります。

## 研究開発費が向かう分野

自動車業界では、EVなどの電動化、自動運転、次世代車、脱炭素やカーボンニュートラルに向けた技術開発が進んでいます。製薬業界では新薬の開発が中心で、ADC(抗体薬物複合体)などの新しい薬にも巨額の研究費が投じられています。このほか、新素材、エネルギー、環境技術への投資も進んでいます。

いずれも、現在の製品を少し改善するためというより、5年後、10年後の事業を支える技術をつくるための投資といえます。

研究開発人材の不足――67%の企業が「採用が難しくなった」

同じ記事では、研究開発人材の採用について、67%の企業が「難しくなっている」と回答し、「しやすくなった」と答えた企業はわずか1%でした。研究開発費を増やしても、実際に研究を担う人がいなければ、新しい技術は生まれません。

## 産学連携の重要性と、共同研究の現場の課題

研究人材が不足するなかで、企業と大学の産学連携はさらに重要になると考えられます。大学の研究室と企業の共同研究では、企業が学生の育成に関わり、大学の研究を支えるなど、両者が二人三脚で研究を進めています。

一方で、共同研究には特有の難しさがあります。それは、研究成果をいつ、どこまで公表するかという問題です。

– **NDA(秘密保持契約)**:企業との共同研究では、必ず秘密保持契約を結びます。
– **学会発表・論文**:大学では研究成果の発表を重視しており、むしろ義務でもあります。筆者の研究室の学生にとって、学会発表は自身の成果であり、卒業して学位を得るための必須条件でもあります。
– **特許出願**:企業にとっては、学会発表によって重要な情報が外部に出ることは避けたいものです。そのため、発表の前にまず特許を出願するという判断になります。

どこまでのデータを公開し、それをいつ発表するか。この調整は、共同研究を進める上で非常に難しい点であり、筆者自身が担っている役割でもあります。

研究セキュリティー――成果の公開と知的財産の保護のバランス

記事では、研究セキュリティーについても取り上げられていました。研究成果を社会に出すことと、企業の技術や知的財産を守ること。産学連携が広がるほど、この両立のバランスはますます重要になります。

まとめ

– 日本企業の研究開発費は17年連続で増加し、2026年度計画ではトヨタ自動車の1兆6000億円がトップ。
– 売上高研究開発費比率は、トヨタ約3%、デンソー9.1%、アステラス製薬16%、第一三共21.4%と、業界によって大きく異なる。
– 研究開発人材の採用は67%の企業で難しくなっており、研究開発は予算だけでは進まない。
– 研究をする人、企業と大学をつなぐ仕組みと人、成果を守りながら社会に出していくルールが、これからの研究開発の鍵になる。
– これからの研究開発は、企業、大学、外部の専門家がそれぞれの強みを持ち寄る時代になっていくと考えられる。

関連キーワード

研究開発費、研究開発費 17年連続、売上高研究開発費比率、トヨタ 研究開発費、デンソー、アステラス製薬、第一三共、EV、自動運転、脱炭素、カーボンニュートラル、新薬開発、ADC、抗体薬物複合体、研究開発人材、研究人材不足、産学連携、共同研究、NDA、秘密保持契約、特許出願、学会発表、研究セキュリティー、知的財産

—

La quaLab(ラクオラボ)は、最新の技術をわかりやすく紹介するとともに、企業の技術相談、研究開発支援、受託研究などを通じて、企業の研究開発や技術開発を支援しています。研究開発や産学連携に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

最新技術を品質向上に。