ベンチマークは真似するだけじゃない ―中国EVの分解から見る、設計によるコストダウンと品質の考え方


ベンチマークは、学んで工夫を加えること
ベンチマークとは、他社の製品を真似することだけではありません。優れた技術を学び、自分たちの工夫を加えて、さらに良い製品を作ることに本当の価値があります。一方で、製品を分解して構造が分かっても、材料の品質や製造工程の管理、長期間使用したときの耐久性までは分かりません。形だけでなく、材料や製造方法、品質まで考えることが重要です。
企業の中で行われてきた分解調査
製造業では、他社の優れた製品を購入して分解し、その性能を調べるベンチマークが昔から行われてきました。自動車メーカーであれば、ライバル会社の車を徹底的に分解し、使われている部品、構造、コストの下げ方を調べて、自社の製品開発に生かします。こうした調査は基本的に企業の内部で行われてきましたが、今では日経BPが中国の電気自動車を分解して解説する動画を、YouTube で誰でも見ることができます。
中国EVメーカーの成長とものづくり
分解されていたのは、2015年に設立された中国のリープモーターの電気自動車 B05 です。同社は2025年に世界で約60万台を販売し、2026年には年間100万台を目標に掲げています。
電気自動車では、バッテリーやモーター、電子回路の熱を冷却水で管理する熱マネジメントが重要です。分解動画からは、この熱管理の仕組みに、筆者も乗っているテスラ、つまり先行するメーカーの技術をかなり研究している様子がうかがえました。モーターも、内部構造がテスラのものとよく似ているように見えました。構造が似ているからといってコピーとは限りませんが、先行メーカーの優れた技術を徹底的に研究し、自社製品に取り込む姿勢が見えます。
設計そのものを変えるコストダウン
注目したいのは、車体の一部をバッテリーパックの蓋として兼用する構造です。別々に作っていた部品を一つの構造で兼用することで、部品点数や車体の重さ、組み立て工数を減らせる可能性があります。強度や安全性、修理の仕方も考える必要はありますが、単に部品を安く購入するのではなく、設計そのものを変えてコストを下げる合理的な考え方です。
また、中国の EV メーカーでは、温度や圧力を測るセンサーなどに中国国内で製造された電子部品を積極的に採用する動きがあります。調達コストを下げ、部品の供給を安定させることが期待できますが、自動車部品である以上、品質や信頼性の確認が前提になります。
開発サイクルの速さと、分解では分からない品質
先行メーカーの製品を研究し、優れた技術を取り入れ、自社の工夫で製造コストを下げ、短期間で製品化する。このサイクルを早く回せることが、中国の新興 EV メーカーの競争力の背景にあると考えられます。
ただし、分解で分かるのは構造までです。筆者は以前、塗装機メーカーに勤めていました。見た目が同じ自動車の塗装でも、膜の厚さや層の構成、使用する塗料によって品質やコストは大きく異なります。ベンチマークでは、形だけでなく材料や製造方法、品質まで含めて評価することが欠かせません。日本の製造業にとっても、中国のメーカーのものづくりから学べることは多いはずです。
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