AI時代に「人と直接話す時間」は減るのか ―機械と向き合う働き方と、対面コミュニケーションの価値


機械と向き合う時間が長くなっている

メディアアーティストであり研究者でもある落合陽一さんは、コンピューターと自然の境目が曖昧になっていく世界を「デジタルネイチャー」として提唱しています。その考え方に関連して、私が強く共感したのが「現代人は一日の多くの時間を、人間ではなく機械と向き合って過ごしている」という指摘です。

メールを書く、資料を作る、インターネットで調べる、オンライン会議に参加する。話す相手が人間であっても、多くの場合はパソコンという機械を介しています。さらに現在は、AIとまるで人と話すように対話できるようになりました。

12、3時間の仕事のうち、対面の会話は1〜2時間

大学教員である私の一日を振り返ってみました。大学の個室で研究、論文執筆、事業の準備を行い、この日は12、3時間ほど仕事をしました。学生との雑談、来客との打ち合わせ、税務署での相談、2時間ほどの会議もありましたが、会議は1対1の対面の会話とは異なります。実際に顔を合わせて会話した時間は、肌感覚で1〜2時間でした。

大学の夏休みには学生がほとんど来ないため、1週間誰とも話さないこともあります。そうした時期は不思議と仕事が進むのも事実です。

AIとの対話は、パソコン作業の延長にある

私はChatGPTと毎日会話しています。研究の相談、配信テーマの検討、英会話の練習、そしてこの配信の原稿づくりもChatGPTとのやり取りで進めています。

キーボードで入力し、返ってきた情報を読み、考えて、また入力する。多くの方が仕事中に行っているこの作業を、私は音声で行っているだけです。つまり私たちは、気づかないうちに無機物とコミュニケーションをする時間を増やしています。

AIが進化すれば、同僚に聞いていたことや、誰かと相談して進めていた仕事も、AIと一緒に進められるようになります。私自身、会計処理の誤りへの対応をAIと一緒に進めましたし、この数カ月で仕事のやり方は大きく変わりました。AIを外すことは、もうできないと考えています。

人と関わる時間が持つ価値

一方で、人と直接話す時間はますます短くなっていきます。私は46年テニスを続けていますが、テニスの良いところは必ず人と関わることです。ダブルスでは4人でプレーし、雑談をし、笑い、ミスに怒り、相手にイラッとする。感情が表に出ます。

テニスを続けている人は老けにくいという話を聞いたことがあります。老化を防げると断言はできませんが、人と会って、話して、笑って、感情を動かす一連の時間は、人の心の若さにつながっていくのではないかと考えています。

AIを使いながら、気づいておきたいこと

AIの便利さと引き換えに、私たちは何かを失っているのかもしれません。AIの利用をやめるべきだということではありません。人と直接話す時間が減っていることに、もっと意識的になってよいのではないか、という提案です。

今日、朝起きてから何時間、人と直接話したでしょうか。AIがもっと身近になったとき、人と人とのコミュニケーションがどうなっていくのか、一度考えてみていただければと思います。

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